雨の日ばかりエンストするのは、気温や湿度のせいじゃない?
バイクが古くなってくると、「雨の日に調子が悪いのもしょうがないかな」と思われる方もいらっしゃると思います。だけど実際はどこか故障していて、直せば快調に走るようになるかもしれません。
今回は雨の日のスクーターによくある「スパークプラグキャップ及びイグニッションコイルの漏電」について解説していきます。
どんな部品?
イグニッションコイル
イグニッションコイルとは、バイクの12Vの電圧をスパークプラグから放電するために必要な高電圧に変換するための変圧器です。詳しい構造についてはスパークプラグの大手メーカー、NGKのサイトで見ていただけます。
とはいえなかなか難しいお話ですので、プラグに電気を流すためのものだと覚えていただければ問題ありません。

プラグコード
イグニッションコイルとプラグキャップを繋ぐコード、名前のままです。純正パーツだとイグニッションコイルとセットで扱われることが多いです。故にここがダメならイグニッションコイルごと交換になります。ただし社外パーツならその限りではありません。

プラグキャップ
プラグキャップとはプラグコードの先端に取り付けられており、プラグキャップへ差し込まれているパーツです。プラグコードを伝ってきた高電圧をプラグへと伝える役割があります。

なぜ雨の日に止まる?
まず前提として「正常なプラグキャップ及びプラグコードは絶縁されている」ということがあります。しかし長く使っていると絶縁が甘くなり、外側に電気が流れやすくなってしまいます。ただ普段は乾燥しているため、表面化しません。
ところが雨が降り水溜まりができ、その上を走行することで故障が顕在化します。水飛沫が上がり、それが車体の下側からイグニッションコイルやプラグ付近に付着します。ご存知の通り水は空気よりも電気を通しやすいので、水を伝ってエンジンのシリンダヘッドなどに電気が逃げていきます。
全ての電気が失われなかったとしても、エンジンの燃焼室内で火花を起こすための電圧が不足していれば当然エンストします。晴れの日は乾燥して問題なく走れるので「まあ雨の日だしそんなものだろう」と思う方がおられたりするわけです。

確認する方法
一番確実なのは「エンジンを始動してプラグキャップやプラグコードに水をかける」という方法が確実です。ひどいと一発でエンストします。電気がリークしている様子も目で見てわかるほどです。バチバチと音も聞こえます。
ただ触るのは止めておきましょう。当然感電します。結構痛いです(経験済)。
他には「エンジンをかけた状態でドライバーを近づける」ことでリークするかどうかの確認もできます。ただこれも持ち手が金属だと感電します。注意しましょう。

そのままにしておくと?
当然良くなっていくことはないので、だんだんと悪くなっていきます。雨の翌日もダメだったり。最終的には晴れていてもダメになりますが、そこまで放置する人の方が珍しいですね。
走行中にエンジンがストールするのはなかなかの恐怖体験なので、ほとんどの方はすぐに修理されます。50ccの当該部品は比較的安価なので、それも躊躇しない理由の一つでしょう。
ヤマハ車でリークが多かったもの
僕が整備士をしていて、この症状が多かった車両について。
ジョグ・ビーノ
いわゆるSA36Jという型式のジョグとSA37Jという型式のビーノ。プラグキャップ部の差し込み部分が破断したことでリークし、走行不良や始動不良が良く見受けられました。
確認方法は、
- バッテリー部分の蓋を外し
- プラグからプラグキャップを外し
- プラグキャップを引っ張る
という方法ですぐに判別可能です。スポンと抜けたら大体中で折れています。この場合はプラグキャップのみ交換でOKです。

トリシティ125
こちらは車種としては新しいですが、数台確認しています。特にSE82Jと言われる初期モデルに良く確認されました。こちらはイグニッションコイルとプラグコードの付け根部分からリークしているものや、プラグキャップからリークしているものなどが確認できています。
この場合はイグニッションコイルごと交換しなければいけませんが、トリシティのイグニッションコイルは1000〜2000円ととんでもなく安価ですので、アセンブリで変えても大した出費にはならないと思います。

まとめ
これは一例にしかすぎませんが、雨の日だけ調子が悪いのは普通のことではありません!当然ながらちゃんとした理由があります。取り返しがつかなくなる前に対処しましょう。
もちろん自分でできない場合はバイクショップに依頼する形になります。発生状況を詳しく説明できれば修理までの速度も変わるので、起きた時の状況等を覚えておくといいでしょう。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!