積載性と安定感、走行性能を併せ持つツーリングバイク
2015年にMT−09トレーサーとして登場、その後トレーサー900、トレーサー9と名前を変えながらグレードアップしてきました(トレーサー9はGTモデルのみ)。
同じ車種でありながら初期と最新型では値段も装備も大きく違います。要求スペックに応じて求めるモデルが変わってくるでしょう。
ここからはトレーサーの魅力と弱点について解説していきます!
トレーサーの魅力
「クロスプレーンコンセプト」をベースに生み出された3気筒エンジンを搭載したMTー09。その09を基にして生み出されたツアラーモデルがトレーサーです。
ツーリングに適した装備と足回りを有し、数々の便利な機能を備えたトレーサーは、2015年発売当初からアップデートを繰り返して今の形になりました(値段も上がりましたが)。
MTー09 TRACER
MTー09がリリースされたのが2014年。その翌年にリリースされたのがMTー09トレーサーでした。09のスポーティーな走りを実現するエンジンを、ツーリングバイクに積んじゃったんですね。
09登場時から「とんでもない暴れ馬」という認識だった09。当時はそのエンジンを積んだツーリングバイクってどんな?と思いましたが、非常に乗りやすいバイクで驚きました。

ライディングポジション
ツアラーというよりは、オフロードバイクのようなポジショニングです。実際に乗り始めると、肩や腕に負担のかかりにくい非常に楽な姿勢で乗ることができます。
ただやはり欧州向けに作られているの為なのか、足つきの悪さが最大のネックのように感じます。人によってはローダウンをしても乗れないほどにシート高が高く、購入を諦める方もおられるほどです。
乗ってしまえば快適なバイクです。ただそこに至るハードルが一番高いですね。

快適性
ハンドルカバーやスクリーン、フロントカウルが体にかかる負担を軽減してくれるので、長時間の走行にも適しています。やはり風が当たると知らず知らずのうちに疲労が蓄積してしまいますからね。
冬場も体を寒さから保護してくれますし、グリップウォーマーと組み合わせればさらに快適に走行することができます。後期ではGTモデルに純正装着されるグリップウォーマーですが、このモデルはオプションとして後付け装着する必要がありました。

安全性
MTー09にはABS非装着モデルもありましたが、トレーサーには標準装備。さらにはTCS(トラクションコントロールシステム)を搭載。駆動輪の空転を検知して勝手にバイク側が調整するという優れものです。
電装系
フルLEDヘッドライトに多機能メーターパネル。ヘッドライトがハロゲン球かつシンプルなデジタルメーターである初期モデルのMTー09よりも上位感がありました。
夜走る方にとっては非常にありがたいLEDヘッドライト。純正のハロゲン球は本当に暗く、僕の09はすぐに社外のLEDに交換しました。正直夜の高速道路を走る時は、ハロゲン球だと恐ろしくて走れたものではないと感じました。
TRACER900(GT)
2018年のマイナーチェンジに伴い、TRACER900という名称に変更されました。さらに上位モデルとして、GTという上位モデルが登場しました。スタンダードは1,030,000円、GTは1,110,000円(共に税別)という価格でのリリース。前モデルと比べて6〜14万円のアップです。

STDモデル
スクリーン形状が変更されさらに走行時の快適性が増したのに加え、高さ調整も細かく容易に変更できるようになりました。シートの座り心地も向上し、ますますロングツーリングに向いたアップデートがなされました。
GTモデル
STDモデルの変更点に加え、MTー09SPと同様にフルアジャスタブルフロントサスペンションを装備。リアはプリロードをリモート操作でき、さらにスポーティーな走行を可能にしてくれます。
その他にも、シフトアップ時にクラッチ操作が不要なクイックシフターに一定の速度をスロットル操作不要で維持することのできるクルーズコントロールシステム、冬場のライディングに心強いグリップウォーマーや視認性に長けたフルカラーマルチファンクションディスプレイと豪華な装備が最初からついています。
ぶっちゃけGTばかりが売れました。当時の価格差は8万円。だったらGTという人がうちのお客さんではほとんどでした。

TRACER9 GT
そしてついに国内ではGTモデルのみになりました。MTー09SPと違いカラーを選択できることなどがあり、GTが売れたのではないかと推測しています。
新しい排ガス規制に際して作られた888ccの新型エンジンを搭載してアップデートされたTRACER9GT。旧モデルから更なる進化を遂げました。

新排ガス規制対応、888ccエンジン
この変化が非常に大きいです。ただでさえアグレッシブなエンジンが、排気量を上げることでますますスポーティーな走りをするようになりました。特に5000回転からの排気音とエンジンフィーリングが乗り手に心地よく、今旧09エンジンの車両に乗っている方に是非体感していただきたいです。確実に違いがわかります。

KYB製電子制御サスペンション
前後ともにKYB製電子制御サスペンション「KADS」を搭載。従来のサスペンションよりもさらに高い反応速度と広域な減衰力を発生させ、常に状況に即した快適な乗り心地を実現しています。この後に紹介する6軸「IMU」によって制御されています。

6軸「IMU」を搭載
走行中の車両状態を検出し、その情報を瞬時にフィードバックしてエンジンと車体挙動の制御を行う電子制御システムです。ヤマハでは2015年のYZFーR1に初めて搭載されました。常に状況に応じて車両が合わせてくれるという優れもの。
TRACER9GTでは「トラクションコントロール」「スライドコントロール」「リフトコントロール」という3つの制御システムが存在し、個々に介入ON/OFFを選択できます。前タイヤの浮き上がりやタイヤのスリップ等に神経を割く必要が無くなり、ますます快適にツーリングができちゃいます。
その他
クイックシフターがダウン時に対応、フロントブレーキがラジアルマスターに換装、バンク時に狭くなるヘッドライト照射エリアを補助するコーナーリングランプ等多くの機能を備えてのマイナーチェンジとなりました。
価格は前モデルから21万円アップの1,320,000円(税別)になりました。従来のトレーサーの価格で考えれば大きな値上げですが、装備内容を考えればかなりお買い得な価格設定だと考えられます。

トレーサーの弱点
多くの快適な機能を備えるトレーサー。しかしながら明確な弱点が存在しています。
足つきが悪い
多くのお客さんがトレーサーを所持することを断念した最大の理由と言えるでしょう。MTー09TRACERは84.5cm、TRACER900は85cm。シート位置を下げた上でこの高さです。
TRACER9GTになって低い位置は81cmと大きく下がったように見えますが、電子制御のサスペンションが走行中にしかストロークせず、一番高い位置で稼働しないようになっています。そのためかなり高い位置で乗車する必要があるのです。
シートやサスペンションリンクでローダウンすることは可能ですが、やはり限界があります。全くつかないわけではありませんが、車格も大きいバイクでしっかりと足がつかないのは不安な方も多いです。
その他
維持費が高いのは大型バイクであればどれも変わらないかもしれません。後は降車時の押し引きが高いのでやりづらい。ですが乗れるのであればクリアできるでしょう。
正直足つき以外で特にデメリットらしいデメリットはありません。逆に足つきの悪さがぶっちぎりの懸念事項ですね。燃費も大型ならこの程度でしょうし、後付けパニヤケース等カスタムが高いのもこの車種に限った話でもないですね。
まとめ
快適さ+走行性能を兼ね備えたヤマハ屈指のツーリングバイクがこのトレーサーというバイクなんです。サーキット行ったりオフロードに行ったりするバイクでは当然ありませんが(できないわけではない)、ツーリングに非常に適したバイクです。
タンデム走行も得意ですし、多少荷物が増えてもどうってことはありません。それでいて走りはアグレッシブで軽快です。従来のツアラーのような重厚なタイプとは違い、きびきびとした走りがウリですね。
泊まりのツーリングやキャンプに出かける方に非常におすすめです!ただ足つきだけは購入前に確認しておきたくはありますね。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!