メンテナンス

ブレーキの替え時や異常はどこを見ることで発見できる?

命を預かる大事なパーツ

ブレーキの分解作業は人命に関わる部分ですので、自分でバラしたりすることはオススメしません。

時々【整備士絶対信用しないマン】が「バイクの整備ぐらい自分でやらないとダメ」や「ブレーキパッドの交換なんて簡単だし素人でもできるよ」みたいなことを言ってますが(実際言われたこともあります)、もしやるならそれが原因で自分や他人が命を落とすことになる可能性を覚悟して作業してください。(ちなみにネタで言っているわけでは一切ありません、マジです)

ここでは分解方法ではなく、点検する方法とどんな異常が起こるかをお話しします。

ブレーキ周りに起こる異常

まず初めに、ブレーキ周りでどんな異常や故障が起こるのかをお話しします。

ディスクブレーキ

金属同士が擦れるような音

そのほとんどはブレーキパッドの限界値を超えて使用した場合に起こります。パッド部分が全て無くなり、パッドがついていた鉄板がディスクローターと接触して鳴る異音です。

車種によってはわざと鉄板に突起を作っておき、パッドが使用限界に近くなるとディスクに接触して鳴るタイプもあります。いずれにしてもすぐに対処すれば手遅れにはなりません。

パッドがついていた鉄板とディスクローターが擦れて不快な金属音を出す

押し引き時に重い

キャリパーピストンに汚れが噛み込むと動きが悪くなり、引きずりを起こす

タイヤの空気が無い、チェーンの張り過ぎなど他にも原因は考えられますが、その一つがブレーキの引きずりです。ピストンが圧力をかけてブレーキパッドを押しディスクを挟むのですが、当然レバーを離したらピストンは戻らなければいけません。

しかし錆や劣化によって出たピストンが戻りきらず、常にブレーキをかけているような状態になってしまうのです。こうなるとブレーキのオーバーホールが主な対処法となります。

ベーパーロック現象

坂道でブレーキを踏みすぎたり、上記の引きずりを放置したりすると起きる現象です。

油圧ブレーキはブレーキオイルでレバーからの圧力をブレーキパッド側へ伝えています。レバー側であるマスターシリンダーからブレーキパッド側であるブレーキキャリパーまでの経路が、ブレーキオイルのみで満たされていなければ力は綺麗に伝わりません。(パスカルの原理)

しかしブレーキの多用や引きずりで生まれた摩擦熱がブレーキオイルが沸騰させ、経路内に気泡が発生した結果、ブレーキが効かなくなってしまいます。内部に生まれた気泡が圧力の伝達を阻害しているためです。

この症状が起こるとブレーキレバーを握っても手応えが無く、スカスカになります。

必要以上に熱が入った場合、ディスクに虹色の焼きがついてしまう

レバーを握った時にゴリゴリする

ブレーキをかけるためにレバーを握ると、手にゴリゴリする感触がある時があります。ブレーキレバーを取り付けているボルト部分やマスターシリンダのピストン部が劣化してしまうことで発生します。

ブレーキレバーのボルトの潤滑ができていないと、レバーの穴が広がってしまい、ブレーキの効きが甘くなります。最悪取り付け部が破損することも考えられます。

マスターシリンダーのピストン部分の場合、潤滑剤を塗布することで一時的に改善しますが、年数が経過しているならオーバーホールがオススメです。

赤丸部分の動きが悪くなるとゴリゴリとした手応えになる

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握って手応えがあるけれど効きが悪い

レバーの握りに手応えはあるが効かない場合は、ディスクが摩耗して面に段がついている可能性があります。パッドとの接地面積が少なくなり、効きが甘くなります。

また正常時に比べると思い切り握った時に少し甘く感じるかもしれません。ディスクとパッドを交換する必要があります。

赤が普通、青が使用限度を超えた部分

ドラムブレーキ

レバーの戻りが悪い

ブレーキを握ってレバーが戻らない場合は、リターンスプリングが破損している、ワイヤーが劣化している等が考えられます。

リターンスプリングは車種によってサイズや場所が違います。単純に引き戻すためのバネが割れているだけなので交換すれば改ざんします。

ワイヤーは内部にアタッチメントを使用して給油できるものもありますが、錆がひどい場合は切れてしまう前に交換する必要があります。

フェード現象

ベーパーロック現象に似た症状で、ドラムブレーキを連続使用した結果摩擦材が耐熱温度を超えて高温となってガス化し、ブレーキシリンダとの間にガス膜が形成されブレーキが効かなくなる現象。

ディスクブレーキでも起こるが、ドラムブレーキでの発生率が高いです。

ブレーキの点検方法

自分でできるブレーキの点検方法は4つ。

  1. ちゃんと効くか?
  2. パッド残量は十分か?
  3. 引きずりを起こしていないか?
  4. レバーは普通に握れるか?

上記が分かれば十分です。正直上で解説した内容は自分で判断できなくとも何の問題もありません。そこはバイクショップに任せて構わないです。ただいい加減なことを言われないためにある程度把握しておくのもいいでしょう。

ちゃんと効くか?

一番大事です。効かないブレーキには何の意味もないですからね。

押し引きをしてブレーキをかけたり、走行して確認しましょう。普段と比べてどうかという部分になるので、時々チェックしておきましょう。

急に悪くなることはあまり考えられません。じわじわと悪化していくと気がつけない可能性があります。ですので意識してチェックする機会を時折設けておくと変化に気が付きやすくなります。

ちゃんと止まれるかはバイクにとって最も必要な部分と言える

パッド残量は十分か?

ブレーキパッドは使用するたびに摩耗していき、使用限度を超えると交換する必要が出てきます。限度を超えて使用すると金属同士の擦れる音がしたり、握って手応えはあるけど効きが悪くなることにつながります。

完全にパッドがなくなる前に交換することで、ディスクローターに与えるダメージを最小限に抑えることができます。車種によっては非常に高額なローターもあるのでできるだけ長く使いたいですね。

赤い部分が残量だが、見づらい場合がショップで確認してもらおう

引きずりを起こしていないか?

これはエンジンをかけずに押し引きする機会がないとなかなか気がつけないポイントです。乗っている間は少し加速が悪い程度にしか感じないからです。ピストンがロックして発進すらもままならないレベルで引きずっていれば逆にわかりますが、微妙な引きずりは乗ると表面上はさほど差がありません。

それでもしっかり悪影響を及ぼすので、時々押し引きしてブレーキの効きと共に確認しておきましょう。引きずりは放置しておくとかなり高額な修理を引き起こします。

もしピストンやマスターシリンダが原因で引きずりを起こしているのなら、内部を清掃し部品を交換してやればかなりパフォーマンスは向上します。いずれやらなければいけないメンテナンスなので、五年に一度ぐらいの間隔でリフレッシュすれば快適に乗れます。

レバーは普通に握れるか?

固すぎて握れない、手応えがない、根元ががたつく等、ブレーキレバーが正常に握れない場合も対処が必要です。原因は多岐に渡り、グリス切れで固着、エア噛みで手応えなし、レバーボルト摩耗でがたつき等があります。

レバー取り付け部の穴が削れて広がると綺麗に動作しなくなる

ブレーキオイルはどのくらいの頻度で変えるべきか?

厳密に言えば2年毎ですが、僕は4年までの交換を推奨しています(最長車検2回に1回)。このスパンで交換していてお客さんのブレーキの効きが悪くなったことはありません。

ただ使用環境や走行距離によって期間が短くなることも大いにあります。人によっては1年ごとに変えなければいけない場合もあります。

普段の走行距離が浅く、近場だけというならスパンが伸びても大した影響は出ないでしょう。

後書き

スピードより大事なブレーキ。止まれないならバイクはただのミサイルです。しっかりと自分のバイクが止まれるかどうかのチェックは優先レベルが最も高いです。

異常や気になる点を発見したら、取り返しのつかないことになる前にバイクショップで相談することをオススメします。放っておけば更なる高額な修理になる可能性が多いパーツですからね。

それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!